2019年4月7日日曜日

#207 プロ野球が開幕した――長年の疑問、ダウンスウイングとは?

  例年、オープン戦が沖縄から北上してくることにわくわくしたものです。ところが、最近ではわくわくすることが少ないのは歳のせいで感性が鈍くなってきたのかもしれません。  私は年来広島カープ(正式名称は広島東洋カープ)のファンで今でもそうです。詳しくは後述します。一昨年にはエースの前田が大リーグに移り、今年は主力打者の丸が巨人に移籍しましたが、新人選手の育成が巧いカープは今シーズンも首位争いをするでしょう。 開幕3連戦では巨人に1勝2敗、「くそおもろくない」。
  今回は重い政治の話題をひと休みして野球の話をしてみましょう 。

 ◇ 異色の経営に徹する広島カープ 
  カープは2リーグに分裂した1951年に設立された。この時代の事情は戦前に日本プロ野球に台湾人として初めて入った名選手をモデルにして書いた拙著『人間機関車・呉昌征』の中で詳しく書いている。本書は2009年に台湾で刊行されたが、日本では呉昌征は知られていないので売れないという理由でまだ日本語版は出ていない。しかし、本稿『若者塾』で書名をクリックすると日本語で読んでもらえる。 
 さて、2リーグに分裂した時に広島東洋カープが加入した。主な株主は車メーカーの東洋工業だった。今も球団名に東洋が入っているが、過半数の株主は創業家の松田一族であり、車のマツダが少数派株主であるからだ。事実上は親会社ではない。
  今日まで球団は独立採算で経営されている。 大リーグ選手を採らず、ドミニカ共和国に選手養成のためカープアカデミーを保有し、外国人選手はここからカープに入団させている。

 ◇ ダウンスウイングとは何か?
  1961年春に川上監督の巨人がドジャースキャンプから帰国した時、ダウンスウイングがもたらせてマスコミが大きく取り上げた。しかし、球界には広がらなかった。 今思えば、バットを振り下げて打つことばかりが強調されて、もう一つの大事なことが見落とされていた。それはボールの中心の下を打つことだった。野球通によると、選手は外野フライが増えることを恐れたとも言われる。
  対米中のある日、ヤンキースの試合を観ている時、ヤンキースの4番打者A・ロドリゲスが低めのボールをダウンスウイングでホームランを打った。アッパースウイングでないことに私は何か感じたが、この時はよく分からなかった。 
 A・ロッドは生涯ホームラン696本を打ち、大リーグ歴代4位の強打者で、MVP3回、本塁打王、打点王2回,首位打者1回のタイトルを取った。
  他方、薬物の嫌疑がかかり、1シーズンを棒に振った。徹底して身の証を立て復帰した。 
 珍しいことは、彼は現役時代から26歳の時、AROD CORP.という不動産会社を設立し、現在850のアパート(日本ではマンション)を持つ。「この会社経営のために全力で野球をやった」と言っていることだ。(FORTUNE COM. 2017年 8月1日号)

 ◇ 私のホームラン体験三つ 
 中学校3年の時、校内クラス対抗のソフトボール大会があった。不公平のことだが、 野球部現役選手でしかも4番打者の出場制限はなかった。何度目からの打席で大きなホームランを打った。打球ははるか校舎の1階と2階の間の壁を直撃した。
 みんな飛びすぎたことを残念がり,「もう少し飛ばなければ1階の職員室のガラス窓を破ったのに」と言った。 
 なぜあんなに飛んだのか?  
 二つ目は、高校を卒業した年、千葉に住む従兄から湘南海岸に招いてもらった。 
 砂浜でソフトボールを始めた時、従兄は「あなたはセミプロだから左で打て」と言われた。 
 最初の打席で経験がない左打席で打った。軽く打って手ごたえもなくスコンという感じだったのに、打球は砂浜を越えて林の奥に飛んでいった。スペアのボールを持たなかったのでソフトボールはこれでおしまい。 
 なぜあんなに飛んだのか? 
 三つ目は、転勤で東京から富山に住むことになり、社内の職場対抗のソフトボール大会に出場した時、相手は現場のチーム。スポーツに秀でた選手をそろえる現場チームに技術者主体のチームは勝ったことがないという。6イニングだったか、走者一人を置いて打球は外野の塀を越えたホームランを打った。それまで野次が賑やかだった場内はしーんと静かになった。この試合に逆転で勝利した。
  数年前、初めて出席した職場のOB会に出た時、当時を憶えていた一人から「伝説の人が帰ってきた」と言われた。スポーツ万能の彼は私より一つ年下だったが2年前に癌で亡くなった。
 なぜあんなに飛んだのか?

 ◇ 高校野球部の諸君へ
  帰国して大リーグのテレビ中継を観ていた時、投手が討ち取ったと思う外野フライが空中高く舞い上がりホームランになった。大リーグではフライのホームランが多く、滞空時間が長い。そのために外野手が塀際でホームランを阻止する美技が多い。
  他方、日本のプロ野球ではライナーかハーフライナーのホームランが多い。そのため外野手が塀際の美技を見せる機会が少ない。
  私は高校野球部の練習をよく見てきた。いつも疑問に感じたことは、打者がティの上に乗せたボールを短い間隔で打っていることだ。これは腕力を鍛えられるかもしれないが、打った後のフォロースルーも中途半端で、何よりもボールの中心を見ている。数を打っても打力の足しにはならないだろう。
  ゴルフでもこんなフォロースルーでは球を遠くに飛ばせない。 
 もし君が中長距離打者ならボールの中心のすぐ下を狙うことに変えてみるといい。

 ◇ なぜあんなに飛んだのか? 
 体格が大きくない私が重いソフトボールをなぜ飛ばせたのか?
 気づくのに時間がかかった。しかし、後年やっとそれが偶然ボールの中心の下をたたいていたせいだと分かった。3本のホームランはどれも高く舞い上がるフライだった。         (完)    


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