2013年8月3日土曜日

#96 オバマは中国を重視?――大いに異論がある

 元外交官が地元紙に寄稿した文には問題があります。人は外交プロの意見には影響を受けるかもしれません。しかし、外交官にはそれぞれ専門分野があり、逆に限界があるものです。
 今回はここから書いてみることにします。 
 中国をめぐる情勢についても触れますが、その道のプロには思考の限界があるので、私のような素人の発想とは違い――たとえ間違いがあっても――があります。 諸君はどちらも鵜呑みにしないで、諸君自身の考えを持ってください。
 外交に限らず、どの分野でも思考力を高めることができます。  特に、次代について常に考えてほしい。

◇ 「オバマは中国を重視」はおかしい  
 元駐イラン大使であった孫崎享氏(以下敬称略)の地元新聞への寄稿を読んだ。彼の論点には偏向があり、無視できない。一つひとつ反論してみよう。アンダーラインの文は新聞からの引用。   
 

 米国大統領は明々白々、日本より中国を大事にすることを世界に示した。
 彼に限らず、どのメディアもオバマ大統領と安倍首相との首脳会談は1時間で、習国家主席との会談は8時間に及び、米国政府は日本より中国重視の姿勢を取っている証だと報道した。しかし、これはおかしな論理だ。
 私は1978年から1995年までアメリカで生活していたが、この18年間で日本関係がメディアで取り上げられたことは貿易問題くらいだった。首脳会談も1時間を超えることはなかった。隣国のカナダについても、アメリカの石炭火力発電の廃ガスがカナダ上空に流れて酸性雨を降らす問題と、東部海岸の国境地帯で両国漁業者が紛争を起こした問題がメディアで報じられたくらい。日常カナダが報道の対象にされることはなかった。
 両国の首脳会談は首相か大統領が変わった時に行われるだけで、1時間を超えることはなかっただろう。 要するに、アメリカは日本ともカナダとも大した政治課題がなかった。他方、アメリカは中国の東シナ海・南シナ海における脅威、日中関係、経済運営、人権問題など放置しておけない課題が多いのだ。  

 オバマ大統領は安倍首相を好きではない。オバマ大統領は基本はリベラルである。
 この論理が通るなら、オバマはリベラルの鳩山、菅元首相が好きということになる。また、英国の保守派キャメロン首相も好きでないということだ。アメリカ大統領が誰であれ、民主党と共和党に関係なく、こと安全保障に関しては大した違いがない。

 歴史的にみれば、在日米軍の日本駐留は同盟というより、占領体制の延長である。(中略) 日本が中国に吠えても、後ろ盾はない。  
 ドイツには、これまで兵数を減らしてきたが、今もNATO軍傘下で68,000人の米軍が駐留している。これも占領体制の延長なのか?
 アメリカ政府が取る防衛戦略の基本は、本土から遠く離れたところに前線を置くことであり、これは今も変わらない。つまり、ヨーロッパ大陸と太平洋東岸に防衛ラインを敷くことだ。その要がイギリスと日本なのだ。
 日米同盟は日本を守ることが、すなわちアメリカを守ることだ。他方、韓国との同盟は対北朝鮮に目的がある。  最近の中国の覇権主義に対応するために、日米同盟はアメリカの国益にかなうのだから、孫崎が唱えるほど日本を軽視していることにはならない。
 アメリカ政府が中国を重視するように見えるのは、山積する問題を抱える中国政府に対して、武力衝突を避け、中国が政策を変えることを迫っているのだ。

 聞くところによると、孫崎はいろいろ問題がある御仁らしい。私は彼を知るわけではないから、彼の人物や他の考えについては書くことはない。ここでは地方の読者を惑わす彼の寄稿一点について異論を書いている。
 地方の諸君よ、偏向した極論に惑わされないようにしてほしい。

日本政府の対中外交について    
 地方議員団が北京を訪問したし、政府は外務次官を派遣した。中国政府とパイプをつなぐことは大事であるが、相互訪問が原則だ。日本側からだけ中国を訪問する朝貢外交は止めるべきだ。首脳会談をやるなら第三国で行ってほしい。
 朝貢外交の三悪は、新人議員など100人を引き連れて北京を訪問した小沢議員(当時民主党)、再三北京詣でをしている鳩山元衆院議員、わざわざ北京を訪れて「尖閣諸島は田中元首相と周恩来元首相の合意で棚上げされた」と言いに行った野中元自民党議員の一行だろう。当時は中国政府が日本を脅かさない時代だった。
 
 つい先日、毒入り餃子事件の犯人に対し有罪判決が出た。三年もかかった。麻薬犯罪に関しては、即決裁判では犯人が死刑判決を受け、わずか一週間かそこらで死刑が執行されるというのに。  
 諸君は憶えているか?毒入り餃子事件が起きた時、中国政府は「毒は日本で入れられた可能性が高い」と公式見解を表明した。そして、国営の食品メーカーの社長は謝罪するどころか、「我々も被害者なのだ」と言った。中国政府は今も日本に謝罪していない。
 そう、なんでも相手が悪い、謝罪しないことが中華思想なのだろう。  さらに、アメリカから技術や政府情報を盗み取るサイバー攻撃についても、オバマ大統領との首脳会談で習国家主席は自分たちも被害者だと言った。  考えてみよう。サイバー攻撃は愉快犯(人を困らせて喜ぶ)の迷惑メールではない。サイバー攻撃は給料によって生活を保障されている軍人か公務員の大部隊にしかできない。中国か北朝鮮に限られているだろう。                (完)


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