#197 相撲協会の伝統がおかしい――NHKもおかしい
ニュージーランドの女性首相が産休を取ることが話題になっています。そして、国会議員の40%が女性であることも報道されました。日本では10%であるとか。
諸君たちはどう受けとめましたか? 多分、「日本は遅れている」だったか。私は「それがどうした!」でした。
◇ 土俵に女人禁制
大相撲の土俵には伝統に従って女性を入らせないというのは、本当に伝統なのか?
諸君は女性が大相撲の観戦すら禁止されていた時代があったことを知っているか。
江戸時代のことだ。
先般の大阪場所で急病の力士に女性の医師や看護師が観客席から土俵に上がって救急措置をしていたら、相撲協会が退去を要求した。ひどいものだ。
伝統というものは変わる。私は「守る伝統、変える伝統、つくる伝統」があると提唱している。「しがみつく伝統」は伝統のうちに入らない。
女性とは関係ないが、「変える伝統」の一つを挙げれば、外国人力士の入門がそうだ。1960年代に反対意見がある中、相撲協会はハワイ人に門戸を開いた。今では世界の数ヶ国に広がった。何か問題があるか?
この伝統も変わった。修験道の修行でも女性が参加できる山がある。当地富山の立山に江戸時代まで女性の登山が許されなかったが、今では万人に解放された。「しがみつく伝統」から「変える伝統」に変わった。
相撲協会が言うように相撲が日本の伝統の国技であるなら、表彰式は伝統から外れている。例えば、優勝者を表彰する時の音楽は「勝利の賛歌」の洋楽であるし、トロフィは日本古来の品ではない。授与者の服装も洋装で羽織袴ではない。伝統も時代に合わせて変わるものだ。
要するに、伝統とはしがみつくものではなく、精神を守ることなのだ。
◇ NHKの伝統とは
NHKの現在ある全国組織は戦前のラジオ局が、都道府県の県庁所在地ごとに支局が置かれたことを継承している。今も多くの支局は城か城址の一帯に立地している。かつてこのような支局体制について批判があった。「なぜNHKは娯楽番組か多いのか?」という批判もあった。 これに対し、NHKはまだ日本国内にはNHKの電波しか届かない地域があり、民放の娯楽番組を観られない人たちがいるからだと答えていた。時代が変わって今では台湾ですらNHKテレビを観られる。
今日、民放テレビはどこの地方都市でも地元のテレビ局があり、誰でも観られる。離島でもNHKも民放も観られる。それでもNHKの娯楽番組は多い。NHKのテレビには地上波では総合、教育の二つに加え、BSでも2局がある。その上、出版、番組制作の子会社に外注の会社も傘下にある。
とてつもなく、NHKは巨大化している。さしあたり、娯楽番組を減らして組織の縮小が必要だろう。これは伝統を守ることではなく、組織改革だ。
◇ なぜNHKは台湾を報道しないのか?
台湾の知友人はNHKテレビをよく観ている。だから日本の日常を知ることができる。日本語を勉強する若い世代も観ている。
ところが、NHKのBSニュースでは世界23局を選んで各国のニュースを毎日放映しているが、なぜか台湾は含まれない。ヨーロッパでは英独仏に加えてスペインを選んでいても、EUで一体感があるせいか、ニュースの話題がよく重複している。
他方、アジアでは香港、中国、タイ、ベトナム、シンガポール、フィリピンが選ばれ、台湾が入っていないのに、香港が中国とは別に選ばれているのは、最近よく言われるNHKの偏向だろう。
先般日本に来た台風6号は、台湾南部に上陸したが、被害について日本のメディアはまったく報道しなかった。台湾は日本の東日本災害に200億円もの支援金を送り、ベトナム豪雨にも支援したのにである。
NHKは中国政府の顔色を伺い、台湾を無視している。
◇ NHKの日本語の乱れが止まらない
NHKの番組の出演者はアナウンサーからタレントまでカタカナ外来語を使い、日本放送協会から「日本語破壊協会」になっている。例は本稿に以前指摘した。
最近では「サブスク」という新語をつくった。本来英語のsubscription(購読)から来ているのだろうが、これを「常連さん」と読んでいた。
特筆しておかなければならないことがある。それはNHK職員の中におかしいカタカナ語を使わず、流行り言葉を出さない模範的な一群の話し手がいることだ。彼らは日曜6時の「世界はいま」に毎回出演する国際部のディレクターや解説委員だ。彼らに共通することは海外駐在のキャリアがあることだ。何か海外駐在と関係があるのだろうか。
私もアメリカで長年生活したが,アメリカ社会では国語を大切にする風土があった。帰国してから日本語に関心が深まっている。
諸君たちは「サブスク」が何かわかるか? (完)
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